家族の笑顔が戻った瞬間 

線維筋痛症

2020.11.20. 鳥取にて

 ある家族が武司さんに会いに来ました。十数年にわたり線維筋痛症の治療を受けているお姉さんと9年程前からパニック障害を抱えている妹さんとお母さん、そして、妹さんの小学校低学年の息子さんの4人です。

 「線維筋痛症」とは、全身にわたり慢性的な激しい痛みが生じ、強いこわばりや睡眠障害、うつ状態などさまざまな症状が生じる病気です。原因は不明で、検査も異常は無く効果的な治療はありません。
 「パニック障害」は、突然理由もなく、動機やめまい、吐き気、手足の震えといった発作を起こし、原因不明の死にそうな苦しさや不安を抱え、日常生活にまで支障がでてしまう程の病気です。

 武司さんは、お母さんに問いかけました。「これですごく楽になるけどいいですか?もう笑いっぱなしになっちゃう。文句はいいません?」
 お母さんは、「言いません。笑わせてやってください。」と即答しました。
 武司さんは、「以前、子どもをよくして身内に文句言われたので、それ以来ずっと本気でできなかった。今日は本気で、親の許可をもらってやるから。びっくりしないで。」と、お姉さんの両肩に手を当てられ、その手をゆっくり離し引き上げました。その瞬間、満面の笑みになった娘と向き合ったお母さんは思わず「いい顔!」と囁きました。目を大きく見開きながら声を上げて笑う娘は「えーっ!うそーっ!えーっ!びっくりしたぁ!こんな笑えるんですか!」と喜びと驚きが止まらない様子でした。

 武司さんは、その様子に頷きながら、「以前、触ってよくして『触られた』と言われたこともあった。そのことを気にしなかったら軽く触るだけで出来る。」

 そして、妹の息子さんに「息子さん、お母さん、もっと笑かしてもいいですか?」と尋ねました。息子さんは元気よく大きく頷きました。

 武司さんは妹さんの両肩に手を当てられ、その状態でお姉さんに「こっち来てみな。取った瞬間、すっごく仲良くなるから。」と伝えました。武司さんが妹さんの肩からゆっくり手を離された瞬間、姉妹は見つめあい「えーっ‼️」と驚きながら大笑い。姉妹の元にお母さんが寄り添い、妹さんに息子さんが飛びついて抱っこし、親子がしっかり抱き合っていました。

 後に、この家族の1人ひとりが笑顔で興奮気味に話してくれました。
姉は、

「線維筋痛症ということで薬をもらって何年も痛みの中で生活をしてきました。」「武司さんに取って頂いて、一瞬にして世界が変わりました。自分の意志の前にお腹から笑いが込み上げてきて、もうほんとに180度一瞬で変わるすごさを体験しています。体が震えています。本当にすごいです。」

妹は、

「私は職場で倒れた当時は一歩も家から出られず、食事もろくに取れず、息もできない感じで、外食とか人ごみの中を歩くなんてできなかったんですけど、今日は母と姉とこんな笑顔で美味しく食事ができる日が来るなんて、思ってもなかった。すごいです。」
「武司さんに取って頂いて、何かが体から抜けていって、ずっとわだかまりがあった姉の顔をみた瞬間にすごく笑っていて、そして、息子を見て母を見てさらに笑顔になって、すごいです。笑顔が止まらなくて、すごく嬉しいし、幸せです。」

娘達の様子にお母さんは、

「二人が声を立てて笑うとパッと明るくなって、ほんとに…世界が明るいです。」

と涙の笑顔で伝えてくれました。

 微笑みながら頷いて聴いていた武司さんは静かに語りかけました。
「わけないんだ。俺はみんなに見えないものがわかってる。こんな役に立つと思わなかった。また使ってね。」
「自力本願。自分のためにやる。お母さんがそうでしょ。頑張ればこうやって子どもの笑顔が返ってくるじゃん。親っていうのは子どもの笑顔が一番いいんだよね。」

 お母さんは、武司さんを真っ直ぐに見つめて答えました。「元気で笑ってくれたらほんとに…。嬉しいです。」
 本人の「よくなりたい」という気持ち、親が子どもを思う気持ち、子どもが親を思う気持ちに武司さんの力が重なり、奇跡の瞬間を見せていただきました。

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